プレス金型の打抜きパンチで良く使われる材質は、SKD11(合金工具鋼)、SKH51(高速度工具鋼)、SKH40(粉末高速度工具鋼)があり、生産数量や被加工材の種類などで、お客様ごとに基準を持って使い分けがされています。しかし、加工性の悪い被加工材が増えていることや製品精度の向上によりパンチの寿命が低下する事例が多々見受けられるようになり、対策を考えるときに材質の選定で悩むというお話をよく伺います。今回このコーナではこのような材質選定での悩みを少しでも解消するために、事例をあげて材質変更の目安を紹介します。 ※事例は一般的なもので、金型精度やプレス機精度、加工条件により異なることがありますのでご了承ください。
■事例1:打抜き力が高く、パンチ破損が発生する(図1)。
表1 代表的な材料の機械的性能
図2 硬さと圧縮耐力の関係 出所:大同特殊鋼(株) (※DEX40:JIS記号SKH40)
図3 摩耗状態
せん断面が大きい場合、打抜き加工で発生する加工熱によりパンチ素材がなまり、摩耗がはやくなる場合があります。これはパンチ材質にSKD11を使用している場合に多く発生します。図6・7は、板厚7.8mmの軟鋼板、クリアランス0.3mm(板厚の4%)で加工した場合の被加工材の上昇温度を示します。図8は、被加工材の違いと加工速度の違いによる切刃平均温度を示し、これらによるとパンチ温度が300度を超えることは条件によりまれに発生します。通常、SKD11は200度の低温焼戻しで使われることが多く、パンチ温度が300度近く上がると焼きなましされて硬度が低下し摩耗が早くなります。対策として、スタンピングオイルにより充分に冷却する方法がありますが、高温焼戻しで使用するSKD11改良鋼への変更も有効となります。図9はSKD11改良鋼の焼戻し曲線で、この材料へ変更することでSKD11よりも硬い62HRCが得られるとともに、PVDコーティング(処理温度500度前後)も母材が変化することなく処理が可能となるメリットがあります(パンチ工業製品は高温焼戻しをするSKD11改良鋼を使用しています)。
■事例4:製品精度が高く、微細なバリやせん断面の異常が問題になる。
図9 冷間ダイス鋼の硬さ 出所:大同特殊鋼 (DC53:SKD11改良鋼)